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涙の先に見えるもの

第1章 涙の先に見えるもの

「相澤ッ!!お前ら何をしてるんだ?!」

 物凄い怒声が聞こえた後、回りが騒然し、それまでうるさかった女達が黙り混む。

「沢野さん、なんで……? 今日は大事な商談があるって……?」

「うっさい! お前みたいな女、マジで大嫌いだ。二度とそのツラ見せんな!!」

 頭が真っ白になる。ふわっと頭を撫でられると手を引かれ、店から連れ出される。何が起こったのだろう? 頭がついていかない。手を引き走る沢野さん。私はただただついていくしかない。

「はぁ……はぁっ……」

 息が切れる。

「あ……! ごめんな、こんなに走らせて」

 沢野さんは立ち止まると飲み会会場から少し離れたところのアパートの階段を上り鍵をあけた。

「入って」

「でも……」

「いいから気にしないで」

 私はパンプスを脱ぎ、フローリングのワンルームへと入る。 

「お風呂、使っていいから。話はそれからしよう。服、女の子でも使えそうなの何か探して出しとくから」

「……ありがとうございます」

 沢野さんからお風呂を借りてはいる。お風呂場で悔しくて、涙が止まらない。これから沢野さんに何を言われるのか、それが怖くて仕方ない。

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