
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第2章 弐
櫻井「いや、俺さ。…成瀬さんが幼少期に施設で過ごしたって話してくれたじゃないですか」
そう言っていつものウィスキーを口にする。
その成瀬さんの話を聞いた櫻井さんは、もしかしたらとずっと思ってたらしい。
櫻井「……でもなかなかタイミングがなくて。智と同じ所で育ったんだったら、会わせてやりたいなぁってずっと思ってたんだ」
大野「……領、弁護士なんだ?…凄ぇな♪夢叶えられて♪」
成瀬「…まぁ。死に物狂いだったさ。まさか、櫻井と智が…ねぇ?」
「あ、の………僕…置いてきぼり、なんですけど…」
大野「あ、ごめんな(笑)?…俺、施設育ちなんだよ。親居なくて。…そこで、領と一緒だったんだ」
「……そう、でしたか」
成瀬「…生意気でさぁ、智。施設の中でも群を抜いて厄介な奴だった(笑)」
そう言って笑った成瀬さんは、やっぱり何となく大野さんに似てる気がする。
笑う雰囲気と言うか、話し方?
同じ施設で育つと、そうなるんだろうか。
大野「ははは(笑)…反抗期なんてもんじゃなかったなぁ(笑)」
成瀬「…反抗期?冗談じゃない。あれが反抗期なら、世間の少年たちなんて可愛いもんだ」
櫻井「あはは(笑)!そんなに(笑)?」
お酒の所為なのか、大野さんとの再会のお陰か…
成瀬さんはまるで別人の様で。
饒舌な上に人間らしい雰囲気だった。
ちょっと失礼かとも思いながら、やっぱり彼は少し感情のない人だと、僕の中でインプットされてたから。
成瀬「…酷かった。先生たちがどれだけ手を妬いたか…」
大野「だから今ちゃんと顔見せに行ってんだろ(笑)…最近、行ってねぇけど…」
成瀬「…覚えてるか?お前、一週間くらい帰って来なかった事あったろ」
大野「……覚えてるよ。……帰って来たら死ぬほど怒られたよ(笑)」
一週間も?
帰らなかったって…
その頃、大野さんは理由もなくイライラする事が常だったらしい。
施設の子はそれほど珍しい事じゃなかったらしいけど、大野さんの場合はそれが常だった。
イライラすると、下の子たちに当たり散らす事になるから、それなら自分が近付かない方が無難と判断した。
結果、落ち着くまで一週間掛かったらしい。
成瀬「…理由も言わねぇ、何を聞いても答えない。先生たちが本当にあれこれ手を妬いてても智はまるで他人事みたいにツラッとしてさぁ」
大野さんが苦笑してた。
