
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
相葉『悪いんだけどさ。……この絆創膏貼ってくれないかな?』
そう言われた。
何で?
…って思ったけど。
相葉『離したら血だらけになるでしょ?店の床汚しちゃうから(笑)』
別に、いいのに。
掃除すればいいだけの話だし、どうせ僕の仕事だから。
それでも笑顔で指を差し出す彼から買ったばかりの絆創膏を受け取り貼ってあげた。
相葉『ありがとう♪マジで♪』
『………』
相葉『ねぇ。……名前、何て言うの?』
『………』
ただひたすらに黙り込む僕。
商品の入った箱を持ち上げると、胸に下がるネームに視線を向けた彼が『二宮くん♪』と笑った。
急いでバックヤードに戻った僕。
彼はそれから週に何度もこのコンビニを訪れる様になって。
その度にひたすら話し掛けて来る。
放っておいてほしい。
僕には人と関わる権利なんかないんだ。
あの日、逃げてしまった僕には…
だからと言ってここを辞める訳にもいかず。
相葉『ねぇ二宮くん♪…俺と友達になってよ♪』
『………』
相葉『俺さ、相葉雅紀って言うの♪普通のサラリーマン。……で、34歳ね?二宮くんは?』
『………すいません……仕事中、なので…』
あまりにも話し掛けて来るから、そう断ってバックヤードに戻った。
仕事にならない…
そう思いながら大きな溜め息を吐き出す。
店長『二宮、ちゃんと仕事しろよ。……クビにすんぞ』
『……はい、すいません』
無駄に叱られ謝る羽目に。
ここをクビになんかなったら大変だ。
この次彼が来たら、はっきり言わなきゃ。
やっぱり数日後にはコンビニに顔を見せた相葉さん。
僕はひたすらに棚に商品を並べる仕事をこなしていく。
相葉『二宮くん♪』
『………』
相葉『俺さぁ、昨日…』
『あの!………申し訳ありませんが、僕仕事中なので…もう、構うの…やめて…ください』
顔を上げられたのは初めだけ。
後はずっと俯いたままで、少しずつ語尾が小さくなった。
それでも目の前の彼には聞こえたはず。
その証拠に『……ごめんね?』と、彼は店を出て行った。
とてつもなく淋しそうで、とてつもなく…申し訳なさそうに。
また一つ。
僕の中の罪悪感が増えた。
