
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
彼はそれからコンビニに来る事はなくなった。
その代わり。
相葉『二宮くん♪』
どこで聞き付けたのか、工事現場のバイト先にやって来た相葉さん。
これには僕もさすがに驚いた。
腰が抜けるかと思うくらい。
ストーカー…
そう思ったけど。
彼の笑顔は、本当に嘘偽りなく僕に向けられるから、そのうち僕の中に彼と言う男が確かに存在する様になった。
半年程、彼はそんな事を繰り返し。
特に何かある訳でもなく、どこかへ誘う訳でもなかった。
そんな距離感が、僕には心地良いとさえ思う様になっている事に気付いたのは、出会って一年程経ってから。
『………あの。……ご飯……行きます、か?』
相葉『……え?…いい、の?』
工事現場のバイトが終わる間際。
傍の縁石に腰掛けてる相葉さんに、僕の口は勝手にそう言ってた。
だから自分自身が一番驚いてる。
だけど言われた相葉さんは物凄く嬉しそうに笑ってた。
深夜帯のバイトまで二時間はある。
僕は相葉さんと一緒にラーメン屋に入った。
外食なんて、最後にしたのいつだろう。
僕に誘われた事がそんなに嬉しいんだろうか。
やたらとテンションの高い相葉さんは、ひたすら喋ってて。
殆んどが会社の話。
その中に頻繁に出て来る"翔ちゃん"って名前も、"大ちゃん"って名前ももう覚えてしまって、まるで僕も友達になったかの様な錯覚を起こす。
相葉『二宮くんって、彼女とか居ないの?』
『…………居たら、こんなバイト…しませんよ』
相葉『そうなんだ♪』
『…どうして…そんな、嬉しそうなのか、意味が分かりません』
相葉『ふふ♪…ごめん(笑)』
その日から。
僕たちはちょくちょくご飯を食べに行く様になった。
相葉さんは自分の事を一生懸命僕に教えてくれて。
くだらない話や、相葉さんの弟の話なんかも聞いた。
僕に…
初めて、友達が出来たんだ。
一緒に居る事が苦痛じゃない人。
気は遣うけど…
それでも苦痛だとは思わなかった。
『友達になってよ♪』と、笑った相葉さん。
ご飯を食べに行く様になってから、僕の携帯番号と彼とのを交換して。
家に帰っても誰かと繋がってる事が、僕には初めてで何だか少しむず痒い感じがした。
相葉さんから、『好きなんだ…』って言われたのはそれから半年経った頃。
