
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第4章 参
智「そんな泣きそうな顔すんなよ(笑)大丈夫だって」
そう言って頭を撫でられた。
思わず俯いてしまう。
『…他に好きな人でも、出来てしまったなら…』って呟く様に言った僕に、大野さんの手がピタリと動きを止めた。
智「……出来たら?…ニノはどうすんだ?」
「………」
智「別れる?相手に、雅紀を譲るのか?」
「だって………仕方ないじゃ、ないですか…」
カウンターの向こうで椅子に座る大野さん。
ゆっくりとグラスのお酒を口に含んだ。
暫く続いた無言に、僕は苦しくて泣きそうだ。
でも、やっぱり仕方ないとしか思えない。
初めに声を掛けてくれたのは相葉さんの方だったけど。
僕は僕なりに相葉さんを大切だと思えてて、今ならきっと相葉さんの居ない日常を想像する事すらも難しい気がしてる。
僕には誰も心配掛ける家族なんて居ないから構わないけど、相葉さんはそうじゃないから。
智「…………あー……翔?…悪い。やっぱ無理だわ。……うん。………うん。悪いな?説明させて?……分かった、じゃあな?」
突然、大野さんの声がして顔を上げたら、どうやら電話してたらしい。
ポカンとする僕に、大野さんは新たなビールを出して。
智「まだ…言うなって言われてたんだ。…けど、俺には無理だ」
「………何、です?」
智「実は。…今、雅紀………見合いしてる」
「………え?」
大野さんの言葉に、僕の頭は一瞬で真っ白になった。
お見合い…?
それはやっぱり、将来を考えての事、だろうか。
そりゃ、そうか。
男同士なんて、いつまでも続けられる関係じゃないよね…
智「おい、泣くなよ。最後まで聞けって」
「………」
智「悪いな?翔がどうしても断り切れなかったんだって、言ってた。雅紀は最後まで嫌がってたんだよ。分かんない様になんて無理だって。バレてニノを泣かせる様な事したくないって」
「………」
智「ただ、翔は翔でどうしても立場的に強くも言えなかったらしい。……悪いとは思ってる。許してやってくれないか?ちゃんと上手い事断るって言ってたから、信じてやってくれ」
「そう…でしたか……でももし…相葉さんが、お相手の方の方がいいって言うなら、僕は…」
智「だからやめろっつったんだよ……絶対ニノならそう言うと思ったんだ」
そう言って大野さんは舌打ちをする。
そしてすぐにまた電話を掛け始めた。
