
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
相葉さんは僕の事を"和くん"って呼ぶ様になって少し経った頃、泣きそうな顔して『好きなんだ…』と打ち明けた。
一瞬、何を言ってるのか分からなかった。
いや、何が好きなのか…って感じで、言われた僕は結構な時間ポカンとしてたと思う。
何も返せなかった。
僕はただ笑う事しか出来ず、でも頭の中は必死で相葉さんの言ってる意味を理解しようとしてる。
好き…って、何?
僕の、事?
何で?
会う度に、電話する度にそんな事を考えてて。
でも考えれば考える程、僕の中の彼は大きくなっていく気がする。
好き…なのかもしれない。
そう思った直後、相葉さんが話してくれた家族を思い出す。
両親と弟…
僕は、いい。
誰も居ないから。
だけど彼には…
そう思えば素直に彼への想いを口になんか出来ない。
そして。
僕は、母親を見捨てた…最低な人間だと、彼は聞いても同じ様に好きだなんて言ってくれるんだろうか。
そんな思いが僕の気持ちにブレーキを掛けるのは当然だと思う。
相葉さんの事は…
好きなんだ。
でも、言えない。
言えるはず、ない。
人殺しの息子…
その現場から、母親を見捨てて逃げた…
親不孝者だなんて…
嫌われたく、ないんだ。
せっかく出来た、友達…
僕の唯一の、居場所。
やっと人間らしく、笑える様になったのに。
もう、元の僕には…
戻りたくないんだ。
その後も、連絡が来れば会ってご飯を食べたり飲みに行ったり。
そのうち相葉さんは会ってても淋しそうな辛そうな顔をする様になった。
相葉『…和くん?……あのさ…』
『ごめんなさい!…僕、ちょっと明日…早いので……本当、ごめんなさい』
分かるんだ。
相葉さんが僕に答えを求めてるって事。
それを僕は悉く交わし、逃げていた。
相葉さんの口から頻繁に聞く、"翔ちゃん"って人。
僕はその彼に会って相葉さんの事を聞いてみたくなった。
だから、突然で申し訳ないとは思いながらも、会社に押し掛けたんだ。
案の定、櫻井さんは驚きと警戒の入り交じった不思議な表情で。
結局、僕は櫻井さんと大野さんに会った。
その時に言われた言葉。
僕は、どれだけその言葉に動揺したか分からない。
本当は、全部話してしまいたかった。
だけどやっぱり、話すなら相葉さんに先に…って思う自分が居た。
