
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
『回りくどく、家族が…なんて言ってないで。ちゃんと思ってる事は全部話してやればいい。男同士の恋愛が恥ずかしいって言うなら、端から傍に居なきゃいい』
大野さんの言葉に、僕は堪えきれずに泣いた。
櫻井さんも大野さんも、本当に吃驚するくらい優しい人間だって知った。
相葉さんにはその後もはっきり告げずにダラダラと二人の時間を過ごしてた。
櫻井さんが事故で入院したって聞いて、吃驚して心臓が止まり掛けた。
同時に大野さんが心配で。
相葉さんが『大丈夫♪あの二人は♪』って不思議な根拠のない自信を見せた。
まぁ実際、櫻井さんも重症ではあったけど、無事で良かった。
大野さんも毎日病院には行ってたみたいだけど。
櫻井さんが次期に社長になるって事をこの頃初めて聞いた僕は、史上最大に驚いた。
驚いたけど…
変に納得出来た部分も無きにしも有らず。
そんないろんな事があった僕の生活は、二年も前から考えると一変した。
ずっと一人で生きてきた僕には、信じられない事で。
ただずっと…
僕の中では引っ掛かってる、僕の過去。
まだ、相葉さんはもちろん。
櫻井さんにも大野さんにも話していない。
怖くて仕方ない。
話した時の彼らの反応が、僕にはとてつもない恐怖。
大野「………ニノ。…今日誰も来ねぇから、いいぞ?」
久しぶりに、一人で大野さんの店に来た。
櫻井さんが社長に就任してかれこれ半年近い今、取締役だった頃よりずっと時間に余裕が出来てるって聞いてる。
なのに、今日は帰って来れるかも分からないらしかった。
大野「会議なんだってさ。…まぁ、忙しくしてるって事はいい事なんだけどな(笑)」
ずっと大野さんにはずっと忘れられない人が居たって聞いてて。
それでも櫻井さんは大野さんの傍に居続けたって事が、凄いと思う。
めげずに諦めなかった櫻井さんは、俺の中では尊敬に値するくらいだ。
「……あの…ちょっと、聞いても?」
大野「ん?何?」
グラス片手に首を傾げた大野さんは、男の僕から見ても綺麗な顔立ちで。
櫻井さんが好きになったのも分かる気がする。
まぁ。
そう言う櫻井さん自身も男前だと思うけど。
「……大野さんは、もう……完全に、吹っ切れたん、ですよね?」
何となく聞きずらいと思うのは、ずっと忘れられなかった相手が、もうこの世に居ないって聞いたから。
