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貴方がいつもそこに居てくれたから…

第6章 四


翌日、僕はバイトの合間に成瀬さんと会う事にしていた。
成瀬さんの事務所に着くと、やっぱり古い建物に少し足が竦む。

薄暗くてちょっと怖いから。

あの日は櫻井さんも一緒だったからまだ良かったんだけどなぁ…
そんな事を思いながらも時間がギリギリになってしまうから、意を決して中へ。

二階以降が特に薄暗くて気持ち悪い。
だから自然と足取りも早まってしまう。


ドアを数回ノックしたら、小さな成瀬さんの返事が聞こえて開けてみた。

そこに…

咲田「いらっしゃいませ。どう言ったご用件でしょう?」

女性が、居た。
予想外の事で言葉がしどろもどろな僕。

成瀬「……二宮さん、お待ちしてました。どうぞ?……しおりさん、お約束していた依頼人の二宮さんですよ?」

咲田「あ、ごめんなさい。…どうぞお掛けください」

立ち尽くす僕にソファを薦めた。

座ってはみたけど、以前来た時はお一人だったし成瀬さんもそう言ってた気がしたけど…

成瀬「…すいません、驚かせてしまって。彼女には今、手伝いをしてもらってるんです」

「手伝い、ですか…」

成瀬「…はい。やっぱり一人で書類から全てを片付けるのは本当に大変で」

「そう、ですか。そうですよね」

ふんわりと、微かではあったけど微笑んだ成瀬さんは何となく少しだけ照れ臭そう。
もしかしたら…
そんな思いが過ったけど、僕はそれ以上聞く事をやめた。

成瀬「…では、二宮さんの案件をご説明します」

そう言ってたくさんの書類を開いた成瀬さんは、とても分かりやすく丁寧に説明してくれる。

これまでの僕に一切無関係な借金は、全部無効にしてくれたと言う。
もちろん相手はあの手この手で反論してきたらしいけど、当然それは違法な物な訳で。

成瀬「…なので、全ては無効と言う事になります。戸籍上二宮さんは未だ親子関係にありますから、難しくはありましたけど」

「そうでしたか……すいません」

成瀬「…いえ大丈夫です。それが私どもの仕事ですから」

「ありがとうございます。…それで……費用の、方は…」

成瀬「…はい。今回、違法な利息等も全て相手と話し合いを繰り返しまして、一部を回収しました」

「……はい」

成瀬「…ですので、そちらからいただくと言う形にさせていただいてもよろしいですか?」

え?
それで大丈夫なんだろうか。
いくらかは分からないけど…

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