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貴方がいつもそこに居てくれたから…

第6章 四


成瀬さんは優しく微笑んで、頷いてくれた。
回収した分は違法な物全てと言う訳にいかなかったとも言ってて。
和解する為にはこちら側も譲歩する事も必要だったと。

成瀬「…すいません、本来なら全てを回収すべきなんですが、今後の二宮さんを考えるとある程度の譲歩が必要でした」

「とんでもありません!十分です。十分過ぎます!……正直…かなり心配だったんです。成瀬さんにお支払い出来るのかどうか…」

成瀬「…そうでしたか。それはすいません、先にある程度の説明をすべきでしたね?」

首を振った僕に、成瀬さんはやっぱり優しく微笑んでくれた。

咲田「……失礼します。…あの、コーヒーはお飲みになれますか?」

「あ、はい。大丈夫です、大好きなので」

カップを遠慮がちに置いてくれたしおりさんは、ホッとした様に表情を緩める。
小さく頭を下げると微笑んでくれた。


その後、全てが解決したと言う説明の書かれた書類を数枚渡され、目を通してほしいと言われた。
一通り目を通してみたけど、何となくしか分からない。
難しい言葉がたくさん並んでるから…
それでも大半は何となく理解出来たから、最後の欄にサインした。

成瀬「…これで全部…全て終わりました。二宮さんを縛り付ける物は全てなくなったと言う事です」

「本当に…ありがとうございました」

成瀬「…いえ。良かったですね?」

「はい。全部成瀬さんと櫻井さんたちのお陰です」

成瀬「……櫻井は本当に優秀な人間です。……まさか、智と櫻井がねぇ(笑)…本当に驚きました(笑)」

楽しそうに笑った成瀬さんは、さっきとはまるで違う人の様に表情も雰囲気も柔らかくなった。
ガラリと変わった雰囲気に、僕も肩から力が抜けていった気がする。

「本当に…あのお二人は優しいんです」

成瀬「…ですね?櫻井は元々人が良いと言うか何と言うか……紳士的な男だったからね?」

「へぇ♪……大学で知り合ったんでしたよね?」

成瀬「…そう。本当に頭の良い男だった。頭が良いだけじゃなくて、加えて優しい。更には親は社長ともなれば、当然モテるよな(笑)」

「…でしょうね(笑)」

こんな話、大野さんの前では出来ないなぁ…(笑)
大野さんは"こう見えてヤキモチ妬きなんだ(笑)"って、笑って言ってたけど。
多分大野さんだって、同じだと思う。

僕だってそんなの聞いたらきっと…


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