
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第6章 四
それから櫻井さんの昔の話を聞いて。
絶対に相葉さんには話さないでおこうと思った。
あの人は悪気はないんだけど、ポロッと言ってしまうところがあるから。
成瀬「…まぁ、智は全部知ってたから…俺としてはそこまで話すんだ?って驚いたけど(笑)」
「あ、知ってるんですか?」
成瀬「…うん知ってた。この前店に行ってそんな話してちょっとからかってやろうと思ったらあいつ…"知ってる(笑)"って笑ってた」
"ついでに、昔の事だしな?って言ってたよ(笑)"と笑う。
凄い…と思う。
そりゃ確かに昔の話だけど。
やっぱり過去は過去でも、気持ちの良い話ではないと思うんだ。
成瀬「…何かあいつらもいろいろあったみたいだな?」
「……ですね…だからなのかは分からないですけど…お二人は信頼関係がとても強い気がします。何があっても壊れないくらいに」
成瀬「……そっか。…良かった。智が幸せなら」
穏やかな表情で微笑んだ成瀬さんが、きっと同じ施設で育った大野さんをとても心配していたんだろうと思う。
昔はかなり荒れていたって言ってた。
弟の様に可愛がっていたはずの成瀬さんにしてみれば、今が幸せな大野さんの姿にホッとしてるんだと思った。
「今はとてもお幸せそうです。たまに、喧嘩って程ではない言い合いもしてますけど(笑)」
成瀬「…ははは(笑)…みたいだな(笑)まぁそれでもいいさ。幸せなら。…施設の先生も凄く心配してたからな」
一時期、全く笑わなかったらしいって言ってた施設の先生は、いつも会う度に心配していたと言う。
ある時期から雰囲気が柔らかくなって、少しずつ笑う様になった事を凄く喜んでもいたらしいと教えてくれた。
きっとその時期が、大野さんの吹っ切れた時期なんだと思う。
お墓参りに出掛けて以降の大野さんたちは僕から見ても凄く距離が縮まった様に見えたから。
成瀬さんの事務所を出てすぐ、僕は相葉さんに電話を掛けた。
「お仕事中にすいません。…今、成瀬さんとお話してきました」
相葉『本当?どうだった?』
「はい。全部無事成瀬さんが片付けてくれました」
相葉『本当?良かったぁ!…良かったね!和くん!本当良かった!』
自分の事の様に喜んでくれる相葉さんに、泣きそうなくらい僕も嬉しくなった。
今夜はお祝いしようって言ってくれた相葉さんに、笑って"はい♪"と返した。
