
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第1章 壱
大野「あぁ。もう完全に(笑)」
そう笑って頷いた。
その顔は本当に綺麗さっぱりって感じに見える。
「……辛かった、ですか?」
大野「まぁなぁ(笑)あんま自覚なかったけど…翔に会った頃、本当脱け殻みたいだったらしい(笑)」
「そりゃ、そうですよね…」
大野「ふふ(笑)………どした?…何か不安でもあんのか?」
「不安………そう、ですね。僕はいつも不安だらけです…」
大野「…(笑)………雅紀は。…きっと何があってもニノの傍に居てくれると思うけどな?」
「…………僕、本当は……最低、なんです」
大野「………」
「まだ、怖くて…話してない事が、あって…」
大野「ふぅ~ん。…人間なんて何かしら最低な部分は持ってるもんだろ。それを何でもかんでも話しゃあいいってもんでもねぇと思うけどな?まぁ。ニノが辛くて苦しいなら別だけど」
優しい、声。
言い方はぶっきらぼうでも、声も雰囲気もずば抜けて優しいから泣きそうになる。
だから、『苦しい……ですよ…』って、思わず溢した。
大野さんは黙ってたけど。
話す勇気を、この人から欲しかったのかもしれない。
今まで居なかった友人が、今目の前に居る事で僕は変われる気がする。
大野「俺さ。………アイツの事、後からいろいろ聞かされてさ。…俺の所為だったんじゃねぇかって、思った事あったんだよ」
ボソボソと、そんな事を話し始めた彼の表情は、吃驚するくらい穏やかだった。
自分の所為で離れて行ったと思ってしまった事。
もしかしたらそれが原因の一つではないかとまで思ったとも言ってた。
大野「だけど言えねぇじゃん、そんな事。俺を好きだなんて言ってる翔にさ。……でも翔は。…本当に吃驚するくらい馬鹿みたいに、デカいんだよ。『智が辛いって思ってる間は、俺も辛いから』っつって。『同じ者同士、傍に居れば少しは救われんだろ?』って、笑ってたよ(笑)」
そう言って笑うと『な?俺だって最低なんだよ(笑)』と更に笑った。
人間は誰しもが何かしら最低な部分を持ち合わせてる。
この人から発せられる言葉は、僕の胸の奥に渦巻いてる黒くて醜い塊をほんの少し柔らかくしてくれた気がした。
「……好き…ですか?……櫻井さん」
大野「ふふ(笑)………好きだな♪…今なら、あいつの為に死ねるわ(笑)」
『調子に乗るから言わないけど(笑)』と、笑った。
