
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第7章 五
バイトを終えて店を出たら、もう外は暗い。
日が短くなってきた所為もあってか、最近めっきり冷えて寒くなった。
大野さんのお店に着くと、とりあえずってビールを出されて。
大野「……で?どうする?」
「お願いしても…いいですか?」
大野「俺はいいよ?…けど、何て言う?俺の事」
「…………お兄、さん?」
大野「ははは(笑)…了解♪」
そう言っただけの僕に、大野さんはたまたま一緒になって飲みに行くって事にしてくれるらしい。
ついでに彼女が居るって事にもなってるからその存在を家族全員が知ってるって事にするとも言われた。
大野「何とかなんだろ?」
「……すいません…」
頭を下げたら撫でられた。
お店の電気を消した大野さん。
一緒にお店を出て、間違えても大野さんとは呼ぶなって念を押される。
心の中で何度も"兄ちゃん"って繰り返し呟いてた。
待ち合わせの喫茶店に着くと、昼間の男性の姿はなくて。
考えてみたら妹さんの顔を知らない僕が、今店内にその子が居るのかも分かんない。
大野「……おぃ…」
呆れられてしまった。
とりあえず座ろうって言われて、席に向かう途中で女の子がスーッと近付いてくる。
『……あのぉ…二宮さん、ですよね///?』
「あ、はい」
『やだぁ♪菊地ですぅ♪昼間お兄ちゃんが話したと思うんですけどぉ♪』
……あれ…
何か、男性が言ってた雰囲気と違う気が…
そう思ったけど、もう今更帰る訳にもいかないから彼女の席に着く事にした。
物凄く、苦手なタイプだった。
『私ぃ、たまたまあのスーパーに行って二宮さん見掛けたんですけどぉ♪もう一瞬だったんですよぉ♪………ってか、誰ですか?』
「あ、えっと……兄です。…たまたまそこで一緒になって…飲みに行こうって…」
『えぇー?全然似てなぁい(笑)』
大野「……早くしてくんねぇ?腹減った」
「あ、っとぉ…ごめんね?ちょっと、待って?」
えぇー?
大野さん…
そんなキャラで行くの?
言っておいてほしかった…
「それで。…話を聞いてって言われたけど…何?かな?」
『だからぁ。…一目惚れしたから付き合ってほしいんですよぉ♪』
「あぁそっか。…お兄さんにも話したんだけど…僕付き合ってる人が居るので、ごめんなさい」
『別に付き合ってるだけですよねぇ?…だったら亜美でもいいでしょう?』
