
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第7章 五
大野「だからさ。…好きだって思ってもちゃんと相手を知ってからにしな?じゃねぇと、そのうち痛い目に遭うぞ?」
さっきの冷たい声とは売って変わって、優しい声の大野さんがそう言って少しだけ笑った。
菊地さんが泣きながらもジッと大野さんを見つめてる。
僕は、とてつもなく嫌な予感がした。
大野「…………言っとくけど。…俺も駄目だぞ?」
どうやら嫌な予感を大野さんも感じたらしい。
冷たくも低い声でそう言い放った。
『何で?…お兄さんにも、居るの?』
大野「あのなぁ………今言った事、ちゃんと聞いてたか?」
『聞いてたよ!…だってお兄さん優しい人だって分かったもん!』
まぁ…
強ち間違ってはないけど(笑)
吃驚するくらい大きな大きな溜め息を、隠す事なく吐き出した。
大野「俺は。…悪いけど、女に興味ねぇの。だからあんたじゃ無理」
『は?』
え?
言っちゃうの?
大野さん、そこまで?
菊地さんが驚愕の表情で大野さんをガン見する。
そりゃそうだろう。
目の前の男の人に、女に興味がないなんて言われたら吃驚もするだろうって思う。
だけど大野さん自身は臆する事なく、告げた。
大野「俺は女に興味がない。それは和も知ってる。…だから彼女を作るって事自体無理な話だ」
『……それって…』
「大…………兄ちゃんは、恋人が居るんです。それは僕しか知らないけど…家族も兄ちゃんが女性と付き合えないって事までは知ってます。だから両親には結婚出来ないって言ってるんです」
大野さんに合わせて話してみたら、彼女の顔が青ざめていくのが分かった。
世間はやっぱりそう言う目で見るんだって、改めて思い知らされた気がする。
少なからず僕はショックだった。
もちろん分かってはいたつもりだけど。
それでも実際に目の前であからさまにこんなリアクションされると、へこむ。
自分からとは言え、言い出した大野さんは平気なんだろうか。
隣に視線を向けると、物凄く穏やかな表情をしてて吃驚した。
まるで気にしてないって表情の大野さんが居て、どうしてかは分かんないけど泣きそうだ。
結局、菊地さんは顔を引き吊らせながら"ごめんなさい"って何度か呟く様に言って帰って行った。
「…大野さん……すいません…」
大野「ふふ(笑)いいよ。気にすんな♪」
頭を撫でてくれた大野さんの手が、やっぱり温かかった。
