
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第7章 五
大野さんのお店に戻って、僕はビールをもらう。
もう今日は開店するつもりはないらしい。
「やっぱり………分かってはいても、辛いですね。あのリアクションは…」
大野「そうか?……まぁ、それが普通か(笑)」
「……辛くないです?」
大野「うん。俺は分かってる奴が居てくれりゃそれでいいからな♪」
"翔のお袋さんが理解してくれてるのが最大の強みかもしんねぇけど(笑)"って笑った。
そっか。
それは大きいかもしれない。
大野さんにはご両親が居ないって事も、もしかしたら白い目を向けられるのが自分だけだって思ってるんだ。
だとしたらそれは、櫻井さんの母親も味方に付けてる時点で大野さんは強く居られる要因なんじゃないかと思う。
大野「俺がそう言う男って言ったって、別に翔の存在を明かさなきゃいいだけの話だしな(笑)」
強いなぁ…
やっぱりたくさん辛い思いをしてきたからこその強さなんだ。
僕にも少しだけその強さがあったら…
相葉さんが家を空ける事に不安を抱かなくても済んだのかな?
強く、なりたい。
強く…なれるかな?
大野「深く考える事ない。…俺の場合は特殊なんだよ、きっと(笑)」
優しく微笑んで頭を撫でてくれた。
それから他愛ない話をして笑ってた。
大野「……ん?……誰だ?」
決して大きくはないインターホンの音が、僕にも微かに聞こえて。
大野さんが玄関へ向かう。
数分して戻って来た大野さん。
その後ろに、見た事のない男性が居た。
てっきりお店は開けないんだと思ってたけど、そうじゃなかった様で。
お客さんが来たんだと、思った。
大野「…どうぞ?…何飲みます?」
山口「ありがとう。…じゃあビールで」
何となく大野さんの雰囲気が更に柔らかくなった気がする。
僕の隣を二つ空けた席に着いたそのお客さんにビールを出した大野さん。
大野「お久し振りですね?」
山口「ごめんね?急に店にまで押し掛けて」
大野「いえとんでもない。来ていただいて嬉しいですよ」
大野さんの敬語が、物凄く新鮮だ。
表情もまた、お兄さんを見てるみたいな雰囲気にも似てた。
山口「実はさ。…かなり迷ったんだけど…」
そう言った男性が、鞄の中から紙袋を取り出した。
あんまりジロジロ見るのも失礼かと思いながらも、ついつい視線を向けてしまってて。
不思議そうに、首を傾げた大野さん。
