
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第7章 五
大野「……これは?」
山口「それさ、松岡が渡せなかった大野くんへのプレゼントなんだ。…誕生日にって買ってて」
大野「へぇ♪」
山口「今更って思ったんだけど、アイツずっと握り締めたまま…息を引き取ったから。いるいらないは別にして、見せておきたかったんだ」
そう申し訳なさそうに言った男性は、もしかしたらお客さんではないのかもしれない。
根拠はないけど、そう思った。
数秒それを見つめた大野さんは、紙袋をゆっくりと開けていく。
決して大きくはないそれ。
中からは小さな箱。
またそれをゆっくり開けると…
大野「……ピアス?」
山口「へぇ♪」
大野「ふはっ(笑)…俺開けてねぇよ(笑)」
山口「そうなんだ?…まぁ、アイツは何個か開いてたから、もしかしたら大野くんの耳開けようとしてたのかもね(笑)」
楽しそうな二人がそこに居る。
何だろう…
よく分かんないけど、これは櫻井さんに話しちゃいけない事なんじゃないかと、物凄くドキドキする。
人の浮気現場に遭遇した…みたいな?
運が悪い時って、本当にどこまでも悪い物で。
僕がドキドキしてるなんて関係なく、大野さんの携帯が音を立てた。
まさか…櫻井さんじゃ、ないよね?
そんな不安は、願望にすら近く。
でも無情にも、僕の願望は打ち砕かれる。
大野「……はい。……あー、翔♪」
更に緩んだ大野さんの表情。
ドキドキとハラハラで、僕はもう居ても立ってもいられない状態。
大野「いや、大丈夫。……今山口さん来てんだよ。…そう。プレゼント貰っちゃった(笑)……いや、アイツから。………ははは(笑)分かった言っとく♪……ん?……うん。じゃあな?」
どこまでも楽しそうな大野さんが"翔がよろしく言っといてって言ってましたよ(笑)"と笑った。
山口「そう♪……帰って来ないの?」
大野「今慰安旅行で出掛けてるんですよ。…俺を惑わすなって(笑)言ってましたよ(笑)?」
山口「あはは(笑)…そんなつもりはないけどね(笑)」
何これ…
楽しそう。
櫻井さん、大丈夫なのかな?
あんなにヤキモチ妬いてたのに…
不安な僕を他所に、やっぱりどこまでも楽しそうな大野さんがやっと僕の存在を思い出してくれたらしく、視線を向けて謝ってくる。
苦笑いした僕に、大野さんは男性が誰なのかを教えてくれた。
亡くなった彼の…親友…と。
