
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第7章 五
それなら尚更櫻井さんには言わない方が良かったんじゃないかって、やっぱり僕は不安で仕方ない。
大野「悪いな?心配してくれたんだろ?…大丈夫。翔も知ってる事だし、一回だけ会ってるんだよ(笑)」
「……そう、なんですか?」
山口「ごめんね?…お客さんかと思ったら、友達だったんだ?」
「あ、えっと…二宮です」
山口「初めまして、山口です。……櫻井くんも俺の存在知ってるし、大丈夫だから(笑)」
「いや、でも……櫻井さん、ヤキモチ妬きですよね?」
大野「ふふ(笑)まぁな?…けど、アイツに関しては特に気にしてないらしい(笑)……生きてる奴の方が気になんだってよ(笑)」
…なるほど。
もう居ない人にヤキモチを妬く事はないって事か。
確かに大野さん自身ももう良い思い出にしてるみたいだから、今更櫻井さんが妬いたところでどうにもならないんだろう。
大野「一応、一旦は受け取りました。…山口さん、墓にでも供えてもらえますか?」
山口「……いいの?」
大野「いいです。俺が行く訳にはいかないから。…山口さんの方が、いいでしょ?」
山口「かもね?…じゃあ、アイツの墓に置いて来るよ」
箱を丁寧に紙袋に戻し、男性に返した大野さんが"怒って出てきそう(笑)"って笑った。
"それはそれで文句言ってやるけど(笑)"とも付け加えて。
山口「良かった。…大野くん、幸せそうで安心したよ」
大野「ありがとうございます」
山口「行ってないんだろ?墓に」
大野「いや、ケリ付けに行った後翔と二人で行きました。…その後はもう。行くつもりもないですし(笑)」
山口「……そっか(笑)」
大野「すいません(笑)」
"いやその方がいい♪"って、優しく微笑む男性、山口さんはもしかしたら…
僕の単なる憶測だ。
どっちにしても、僕にも大野さんにも今更関係ない事かもしれない。
その当時をあんまり知らないけど、大野さんは本当に辛かったはずだと聞いてる。
それでも今、目の前の彼は本当に穏やかに笑ってて。
櫻井さんからの電話に出た瞬間のあの表情は、他の誰にも向けられない物だと思う。
どこまでも櫻井さんを想ってる事が分かった。
一杯だけビールを飲んで帰って行った山口さんと言う男性。
大野さんは"また"と言う言葉を使わなかった。
亡くなった彼を思わせる人物に、再会は望んでいないんだと分かった。
