
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第9章 六
僕のバイトは朝9時から5時までと、11時から7時までのシフトになってる。
殆んど5時までのシフトなんだけど、調整の為に時々7時までの時もあって。
それでもコンビニや交通整理のバイトを掛け持ちしてた頃から比べたら、疲れは雲泥の差だ。
年中無休のスーパーだから休みはバラバラだけど、相葉さんと居られる時間がかなり増えた事が僕には物凄く嬉しい。
「……それじゃ、上がりますね?…お先に失礼します」
『お疲れ様♪…二宮くん、これ持って行きな?』
パートのおばちゃんに渡されたお菓子を入れた袋。
休憩室にはおばちゃんたちが持ち寄ったお菓子が常に置いてあって、時々先に帰る僕にくれたりする。
『ありがとうございます』と受け取ったそれは、どこかの温泉饅頭だった。
休憩室を出て大野さんから渡されたメモを手に店内を回る。
次々にカートに入れていくと、物凄い量になった。
会計を済ませるとレジのおばちゃんにも『お疲れ様♪』って言われて『お先に失礼します』と挨拶する。
買い込んだ食材を段ボールに詰めたら、重くて仕方ない。
店長『あれ?二宮くん。…凄い量だなぁ(笑)大丈夫か?』
「あ、はい。何とか…タクシーで帰るので、大丈夫かと…」
『二宮くんタクシー呼ぶなら俺も帰るから乗って行く?』
声を掛けられて振り向いたら鮮魚部門の男性が居て。
殆んど話した事のない彼は、名前すら曖昧なくらいの人。
人見知りもだいぶ治っては来たけどやっぱりまだ、ちょっと無理な気がする。
況してや車に乗せてもらうなんて…
「……あの…大丈夫です。…悪いですし、タクシーで帰りますから」
『何だよ、水臭い(笑)…いいよ、ほら行こう?』
背中を押されて強引に連れられた。
店長の『お疲れ♪』って声に『失礼します』って応え、これ以上断るのも悪いかと仕方なく車に乗せてもらう事にした。
だけど…
乗り込んですぐ、思い出す。
大野さんのお店は人にあまり知られたくなかったはずだ、と。
『どこ?家』
そう聞かれて、困った僕はどうしようもないからマンションに一旦帰る事にした。
とは言え、そこも僕のではなく相葉さんのマンションだから。
近くのコンビニで降ろしてもらおうと思ったのに。
『何だよ、ちゃんと送ってくって。マンションどこ?』
しつこい…
困った…
しかも彼はこの物凄い量の食材がどうにも気になるらしい。
