
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第9章 六
咄嗟に僕はマンションのかなり手前に見えた見知らぬマンションで降ろしてもらう事にした。
『…なぁ。そんな家族たくさん居るの?』
「あー……はい、兄弟が…多くて…」
『へぇ……意外だな?何か二宮くんって一人っ子のイメージあるけど(笑)』
「そう、ですか?……あの、ありがとうございました。すいません」
『いやいや。いつでも言って?二宮くんならいつでも大歓迎だし♪』
「………え?」
『あー、いやいや(笑)何でもない(笑)…運ぶの手伝うよ』
「いえいえ!大丈夫ですから!…本当、ありがとうございました」
何だか物凄く、嫌な予感がする。
僕は重い段ボールを抱えて頭を下げると、見知らぬマンションのエントランスへ向かう。
外にはまだ彼の車が停まってる。
これは中まで入らないと怪しまれると思った。
オートロックじゃなくて助かった…
エントランスを抜けてエレベーターの前。
適当に階数ボタンを押すと、然り気無く振り向き車を確認して。
……まだ、居る…
どうにもならないから、エレベーターに乗り込むしかない僕。
住人でもない僕が、ここの住人に見られて不審者なんて言われたら…
もう僕は心臓が壊れそうなくらいバクバクしてた。
エレベーターを降りて廊下から外をこっそり見てみたらやっと車がない事を確認した。
一旦段ボールを置いて携帯でタクシーを呼んだ僕は、やっとの思いで大野さんのお店に辿り着く事が出来た。
大野「ははは(笑)……それは本当申し訳なかったな(笑)」
「いえ、大野さんの所為ではないので。…もう本当、あの人何なんだろう…」
大野「………気を付けろよ?…そいつ」
「………やっぱり…大野さんもそう思います?」
大野「うん。…単なる善意だといいけどな?」
やっぱりなぁ…
明日、バイトに行ったらあの人の名前をチェックしておこう。
大野さんに『…雅紀にもまだ言わない方がいいぞ?』って言われて僕は小さく頷いた。
この後、僕はマンションも大野さんのお店も彼に教えなくて本当に良かったと、実感する。
あの男性が、まさかそんな人だったなんて…
想像すらもしてなかったから。
だけど、結局は相葉さんに心配を掛けて泣かせてしまう事になってしまったんだ。
あんなにちゃんと言うからって言ったのに…
そう後悔する日は、何日も経たずやってくる。
