
貴方がいつもそこに居てくれたから…
第9章 六
暫くはバイトしてても彼に会う機会はなかった。
一週間程経った頃、その機会は訪れて。
『……二宮くん』
帰る間際に声を掛けられ振り向いたら、彼が居た。
「あ、お疲れ様です。この前はありがとうございました」
そう頭を下げたけど、彼はニコリともせず僕をジッと見つめてくる。
何だかその目が、怖かった。
『………何で、嘘吐いた?』
そう言って近付いて来る彼は既に私服で。
僕は着替える為に休憩室に向かう途中だった。
後退る僕に、ジワジワと近付いて来た彼。
「あの……嘘…って…」
『嘘吐いたろ?…マンションの場所』
「え?」
『送ったマンション。…住んでなんかねぇじゃん。何でだよ』
「あ、えっと……すいません。…僕、その……居候、なので…」
『へぇ……居候なんだ。家ねぇの?』
「………」
『だったら俺んとこ来いよ♪…な?』
「いえ大丈夫です!僕、ちゃんとしてもらってるので、大丈夫ですから」
怖くて怖くて。
僕は休憩室に駆け込んだ。
休憩してたおばちゃんたちが吃驚した様に次々声を掛けて来る。
何でもないって言ってはみたけど、顔が引き吊ってると言われた。
とりあえず何度も大丈夫って伝えて着替えを済ませたけど…
ここから出たら彼がそこで待ち伏せてるんじゃないかと思うと、怖くて手が震えてた。
『……お疲れ様ぁ♪』
入って来た一人のおばちゃんは、休憩ではなく帰るんだと気付いた僕は、そのおばちゃんが出るまで待とうと思う。
『二宮くんも上がり?』
「……はい」
何かと僕を気に掛けてくれてたそのおばちゃん。
休憩を終えて出て行った後、僕とおばちゃん二人になって。
「……あの……鮮魚部門の、人……そこに居ました?」
『んー?……あぁ、高橋くん?居たけど…もう帰ったんじゃない?』
「そうですか…」
それでも怖いから、僕はおばちゃんと一緒に休憩室を出た。
外に出ても彼は居なくて、ホッと息を吐く。
『じゃあお疲れ様』っておばちゃんが車で去って行く。
僕はマンションまでを歩き出した。
知らなかった。
この時に後を付けられてたなんて。
この日から、彼はストーカーと化してた。
相葉「……ただいまぁ♪」
「お帰りなさい♪」
相葉「今そこに何か変な車居てさぁ…」
「…変な?」
相葉さんの話を聞いて、僕は全身を震わせた。
