後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第8章 淫らなアフターワーク
いくらここにバイトにくる学生達の要領が悪かろうと、私はそれに苛ついたりしない。
彼らはあくまで、勉強中。
言ってしまえば大学こそが、彼らの本来の職場だから。
「ハァ…」
「……っ」
ごめんねバイトくん。これは君への溜め息なんかじゃないのよ。
もしこの余裕のない状況で、微かな殺意を覚える相手がいたとすればそれは──
上司よ、上司。
私の上司である建築家、藤堂隆英は
「なんとかする」「なんとかなる」とさんざんに言っておきながら結局…なんとかならないまま事務所を私に任せて海外に飛び立った。
もちろん海外で遊んでいるんじゃない。
向こうでも仕事をしているわけで…それについては仕方がない。
でもせめて、日本での仕事をきれいに片付けてから旅立つべきでしょう。
自分という人間はひとりしかいないということを理解できているのかしら。
来るもの拒まずの仕事のやり方……
いつか本当に手が回らなくなるからと注意するのに、いつまでたっても藤堂さんは改めない。