後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第9章 詫びのしるし
まだ梅雨すら始まっていないのに…この暑さ。
毎年のことながら憂鬱な季節ね。
カン、カン、カン
私は階段を降りた。
さっさと車に入って冷房を付けてしまおうと早足になった時
頭上から事務所出入口の扉についた呼び鈴の音がした。
カラン
もちろん来客ではない。
「──先輩」
呼び止める声は藤堂さんでもない。
「……どうかした?」
「打ち合わせに僕も同席していいですか」
「……」
振り返って事務所を見上げた私は、後を追ってきた葉川くんを一瞥( イチベツ )して…それから、ふいと顔をそむけた。
返事なしに再び階段を降り始めたわけだけれど
相手もこの反応は予想の範囲内なようで、何を気にするでもなく軽やかな足どりで付いてくる。