後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第10章 それだけの関係
持っていた鞄を手渡す。
彼は受け取ったそれを後部座席に置いた。
「…水に流すという約束だったしね。第一に、仕事に対して私的な感情は持ち込まないわ」
「流石ですね」
「君の説明は本当に上手だったから」
「それほど褒めていただけるなら、これからも同行したいです。──…それに…先輩の意外な一面も見れますからね」
「…?」
発車した車。
私はペットボトルのお茶を口に含んでから、ちょうど車が駐車場を出たところで問いかけた。
「何のこと?」
「──…いえ。てっきり先輩は子供が嫌いかと思っていたので」
「子供が?何故?」
「単なるイメージですが。あの男の子に笑いかける先輩の目が…いつになく穏やかで」
「……」
「…羨ましいなと」
「何言ってるのよ」