後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第10章 それだけの関係
「例えばさっきの男の子を見て、その、なごんだりとか…したりは?」
「そうですね……」
葉川くんはハンドルを握ったまま考え込む。
ちょうど車は直線を走っていたから、運転中にも関わらず、彼の動きは数秒間止まっていた。
「……」
「…っ」
「…あまり、そういった経験はないですね」
「ああ……そういう人よね君は」
やっと出てきた返答が彼の本音なんだって、それが十分に伝わってくる停止時間。
以前なら溜め息をついていただろう私も、今は苦笑いだった。いい加減に慣れてきたからね。
“ 私にちょっかいをかけ続けるバイタリティーがあるなら、もう少し周りにも興味を持てないものかしらね ”
単に血がかよってない…わけじゃないと思う。
でも冷めてるのよね
彼の──中の、大部分の所が。
「大人だろうと子供だろうと、無関係な人に一定以上の感情は抱けませんからね」
「どういう理屈よ」
「ですが──…そうですね、自分の子供ならそれなりに興味も持てると思います。さすがに、僕でも」
「ふぅん」
さすがに。
そう付け加えたところを見るに、葉川くんは自分自身が普通でないと自覚があるみたいだった。