後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第10章 それだけの関係
車窓の向こう側では、整列した街路樹が次々に横を通りすぎていく。
正確には動いているのは自分のほうだけれど、この瞬間の自分は中身のない抜け殻のような状態で…
そんなことにすら気を回せなかった。
まだ開発途中のニュータウンだから、街路樹はまだ小さく、整えられたそれに自然本来の生命力はない。
「作られた緑」である木々──
唯一、葉の隙間から覗いている木漏れ日だけが、その木が生きていることを訴えているような気がした。
カラン..
「……っ」
なんで──私は、動揺しているの。
どうして……!
「先輩?」
「……!!」
「やっぱり顔色が悪いです。車を停めましょう。ちょうど、行きに休憩したコンビニが──」
「ええ……そうね、お願い」
目ざとい彼は私の異変をすぐに察した。
「少し調子が悪いみたいだから…っ…気分転換をさせて」
その原因まで察しているのかは、置いておくとして。