後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第15章 ドレスコード
経営者の挨拶や関係者からの祝辞。
藤堂さんの紹介もすでに終わっていて、私たちゲストは席につき運ばれてくる食事に手をつけるだけ。
後は窓から臨める夜景と、一流シェフのフルコースを堪能してくださいというわけだ。
「和牛フィレ肉のパイ包み焼きだそうですよ。ホタテとアボカドのタルタル添え」
「おお、それは旨そうだな」
「……。(って言いながらもう食べてるし)」
眉を潜めつつ私もナイフとフォークを手に取る。
ここのシェフは元パティシエというだけあって、料理の彩りはどれも綺麗だ。
「…いい加減に落ち着いてください藤堂さん。こういったパーティーには何度も参加してきた筈ですよね?」
「…いや…。場数をふんでも場馴れはしない事もある」
「コンペのプレゼンでは緊張しないのに?」
「それとこれとは別物だ。…すまんな」
私と藤堂さんのやり取りは、どこへ行ってもこんな具合だ。
隣に穂花がいたとしたら、いつものように目をキラキラさせて私たちを見るのだろうか。