後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第16章 汗と横顔
「でも…君はまだ5周目が残ってるでしょう? さらにあと1周なんてキツすぎない?」
「確かにキツイですけど」
「君まで身体を痛めたら困る。いいのよ、私が走るから」
「それは駄目です」
「…っ…どうして?」
アイシング用のコールドパックを手に、葉川くんがこちらに顔を向けた。
試すような微笑み──でもやっぱり、下がった目元は疲労を隠せていない。
そりゃあ疲れてるわよね。
それがわかっているから、彼に押し付けるわけにいかなかった。
「もしかして私を気遣ってる? 言っておくと私はゆっくり走るつもりだから。無理する気はないわ」
「……」
「君の言葉を借りるなら……毎日ハイヒールで脚を酷使しているし? 今さら痛めないわよ」
と言うか、本音は藤堂さんに押し付けたいところだけど。
それは口に出せないので、とりあえず葉川くんにストップをかけた。