後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第16章 汗と横顔
それでも葉川くんはゆずらない。
「…わかってもらえませんか?」
ギラギラと照りつく太陽を背景に私のほうへと近付いて
私にだけ聞こえるように囁いた。
「僕も男なので」
「…?」
「…藤堂先生に完敗するのが、それなりに悔しいということです」
「──…! それって…」
キャラでもない事を言うのね──。
タイムで勝てないからせめて距離だけでも多く走ろうとする彼の心理は、あまりに単純でラシクない。
「先輩がキスしてくれるなら疲れも吹き飛ぶと思うんですが」
「…っ…馬鹿」
「……フ」
馬鹿だ。
いつもの " 賢い " 彼と違う。
こんな大会、どうだっていいのに。
本気になるだけアホ臭いと思っていたのに。