後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第4章 誘惑のドライブ
A3の図面ケースも入る大きなビジネスバッグに、コンペ資料を滑り込ませる。
「ちょうど手が空いているので見てきます。事務所の車をお借りしますね」
何を設計するにも敷地の分析は大切だ。
こういうのは後回しにすると面倒だから、余裕があるうちに見てきたほうがいい。
藤堂さんに断りをいれて穂花のデスクに向かい、彼女からキーを受け取った。
「戻りは遅くなると思います」
「待て、立花。行くなら葉川くんも連れていったらどうだ?」
「え…?」
葉川くんを?
壁のコート掛けからスーツを外して羽織ったところで、藤堂さんが思いもよらない提案をしてきた。
私は支度( シタク )の動きを止め
その意図を聞いてみる。
「ひとりでも支障はないですが」
「そりゃそうだろうがな…。このコンペ、葉川くんにも手伝ってもらえ。彼にとっていい勉強になる」
「……、確かにそうですね」
聞いてみると藤堂さんの提案はまっとうだった。
事務所の仕事に慣れるためにも、彼のスキルアップのためにも、コンペに取り組む意味がある。
「葉川くんは? 参加したいの?」
本人にも希望を聞くと…
「はい、ぜひ」
彼は笑って肯定した。