後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
──
私は混乱していた。
今のは何だったんだろう。
考えるほど混乱が加速するのはわかっているから、逃げ出す道を選んだ。
アルミ階段を駆け降りた後、大股で駅までを急いだ。
クライアントとの打ち合わせに間に合わない時でもこんな歩き方はしないだろうってくらいに…品がなくて
必死さが見苦しい…歩き方。
雨はもちろん止んでいない。
ついに小雨とは言えなくなった天気の下で、私の惨めさは加速するばかりだ。
ああ……濡れる
濡れてしまう
服も鞄も、髪も……顔も
“ いや、今はそれが……好都合 ”
全部濡らしてくれたから、私はまだ辛うじて前を向いて歩けた。