後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
「気になるとすればその理由だけです。季里さんが涙を流さなければならない理由……」
私は本当に臆病者…
「──…しかし、それを貴女の口から話させるほど…僕も無神経ではないつもりです」
「──…ッ」
俯いたまま、ひと言も言葉を返せない。
顔を上げることもできない。
そんな私を葉川くんが抱き寄せた。
背中と腰に手を回されて、互いの身体がくっつく。
ヒール靴を履く私と彼の身長差はあまりなくて、私は彼の肩に顔をうずめた。
どうやら葉川くんは傘を持たずに追ってきたらしく、すがった服はずぶ濡れだった。
私と同じように…
同じように濡れた彼の服が身体にぴったりと貼り付いている。
「どこか近場のホテルに入りましょう。そこで服を乾かさないと」
「……」
「お願いですから、断らないでください」
頭のすぐ横で葉川くんが囁いた。
背中に回された手が、そっと頭に添えられる。