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後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~

第4章 誘惑のドライブ


それを受けて、私は十秒間の無言を返した。

十秒というのは一瞬のようで、数えてみると意外に長い。

「…………どういう意味」

そのくらい待たせたものの、出てきた言葉はたったこれだけ。


「そのままの意味です」

「笑うわよ。失礼ね」

「でも見たことありません」


当たり前でしょう。

どのタイミングで私が君に笑いかけるのよ。


「…楽しければ笑うし、楽しくなければ笑わないわ」


彼の言う " 笑う " という行為が、依頼者との打ち合わせで使うような笑顔を指していないことはさすがにわかる。

だからこう答えるしかない。

それでも葉川くんは納得していないようだった。


「なら先輩は、建築の仕事が楽しくないということですか?」

「……楽しいの意味が違うでしょう」

「なるほど。だとすると……僕との会話は楽しいですか」

「……別に」


話の行き着く先が不透明で、私は慎重に言葉を選んでいた。


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