後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第6章 後輩くんの挑戦状
もちろんその化粧ポーチは私の指から離れて、ダークブラウンのフローリングの上に落ちた。
それを拾うより先に
私は軽蔑の目で葉川くんを見上げる。
「…ふざけてる?」
「まさか」
「ならどういうつもり? 好きでもない相手と寝るだけじゃなくて次は恋人ごっこ?…そこまで私が軽い女に見えるのかしら」
シャワー後の素っぴん顔をじっくり見られるのは辛いが、それでも私は真っ直ぐ彼に顔を向けていた。
「何故、そんなふうに解釈をされてしまうんでしょうか…」
私の機嫌を損ねたことを察した彼は、慌てるでもなく余裕を持って微笑む。
「…ああそうか。先輩は " 順序 " を気にする人。お付き合いするにも、踏むべき順がまだありましたね」
私の前でかがんでポーチを拾い
それを差し出しつつ、彼は色っぽく首を傾けた。
首筋が浮き出る。
「僕を好きになればいい」
「…!」
「僕に惚れて……それからなら付き合って頂けますよね。そして恋人同士ならセックスにも抵抗がなくなるはず。うん、この順番で正しいですか?」
「大丈夫なわけ…ッ─!!」
支離滅裂だと叫びたい。
なのに、私の顎を掴んだ彼によって、開けかけた口に蓋をされた。