Deep Night《R18版》
第6章 No.623
色男はただの客ではない。
そう感じたムツミは口には出さず、もしかしたらと思った。
だがしっかり仕事させられたから多分違うと曖昧に判断するのをやめた。
「次もまた色々聞かせて。すごく興奮する」
「変な趣味持ってんね」
「出来ればハードプレイに参加したいくらいだけど」
最後にしっかりとベルトを締める色男に「次はサービスしとくよ」と痛む右腕を上げて見送る。
「今の客はどうだ?」
入れ代わるように従業員が現れると見送った色男に対して探りを入れてくる。
「あれは違うよ。人のプレイ聞いて興奮するただの変態。あのビデオ売るつもりなら買うってよ」
「3回以上指名で通えば売ると伝えとけ。明後日また来るらしいからな」
「了解」
「今日は休んでいい」
「は?」
「今日だけだ」
「……何それ。意味分かんない」
「まだ仕事したいのか?」
「無理」
同情でも沸いたのかと逆に怖すぎる従業員の態度にムツミは首を傾げた。
「なんなの?」
部屋に戻る途中、足を止めてその場に佇む。
自分は空気と思い込ませるくらい息を止めて耳にした会話は
ーー今後を左右する話だった。