Deep Night《R18版》
第7章 Tiger
そこは噂程度に聞く場所。
女子供を買い取るのが日常茶飯事で無法地帯だと。
女が足を踏み入れれば戻れない。
男が足を踏み入れれば帰れない。
そんな黒い噂しか流れない場所に父親は……2人を売った。
帳は家を飛び出して貧困街に走った。
息をするのも忘れるくらい店を駆け回った。
どこの店も「ガキが来る場所じゃねぇ」と聞く耳すら持ってはくれなかった。
「頼むよ、母さんと妹が居るんだ!」
最後に来た一番大きな店の前で男に土下座して頼み込む。
「……少し待ってろ」
そう言って店の中に戻る男は数分経ってから出てきて帳に言った。
「確かに親子で買い取ったのはウチだ。1週間以内に50万用意したらどちらか片方を返してやる。100万なら2人共だ」
「そんな金……親父はそんなに持ってなかったぞ!」
「バカかお前は。どこの世界でも買取は安くて売りに出すのは倍だ。世の中舐めるなクソガキ」
「絶対だな!約束は守れよ!」
「だったら早くしねぇとな」
帳の望みは金次第。
悔しさに泣きながら貧困街を出て行き、父親をぶっ殺してでも金を掻き集めようと躍起になった。