Deep Night《R18版》
第7章 Tiger
男の癖に見っとも無いと、普段なら鼻で笑われても、この男は帳を笑わずに見ていた。
「現実は甘くねぇぞ」
「分かってる!それでもいい!母さんさえ出せる金があれば後はアンタに借金してでも妹を助けるから!」
「社会勉強代として半分貸す。結果がどうあれお前にとって金が救いになるんなら今回はそれに免じて貸してやる」
「あ、ありがとうございます!!」
「お前、名前は?」
「帳、義虎(ヨシトラ)」
「義虎か、いい名前じゃねぇか」
フッと笑って頭をガシガシと撫でる男は、そのまま50万を帳の目の前に落として「しっかり勉強しろ」と言った。
「おいガキ、必要なモン持って家を出ろ。3時間経つまで帰って来るなよ?」
部屋に残った男が数枚の紙をテーブルに置き、万年床の布団を父親の足元に引っ張る。
テーブルに置いた紙の上に小さいロウソクを立てて火を点けた。
何がしたいかすぐに分かった帳は、金を持って部屋に行き、鞄の中に着替えと隠し溜め込んだ小遣いを詰め込む。
振り返って家の中を少し見つめて家を出た。
3時間後に戻れば家は炎に包まれているだろう。