Deep Night《R18版》
第8章 ミヨコ
「623番!いつまでも寝てんじゃねぇぞ!」
ムツミはゆっくりと、気だるそうに身体を起こした。
休む間もなく次の仕事に行かせられるようだ。
「そんな顔しなくてもちゃんとやるから平気だよ」
ミヨコの頼みごとに頷くムツミは仕事へ行く。
その間、客の取れないミヨコに従業員が掃除を押し付けてくる。
そこで用具を取りに部屋から出ることを許可してもらった。
長い廊下の突き当たりの角に掃除用具が置かれた棚があり、その先は1室の大きな部屋がある。
そこが専門部屋だということは、ミヨコにとっては予想でしかない。
だが、他の部屋を見てきたミヨコには確信のようなものがあった。
掃除用具を持って部屋に戻ろうとするミヨコの前に、ニーナが従業員の袖を引っ張りながら歩いてくるのが見えた。
「むっちゃにもういたいしない?」
「あぁ、お前が頑張ればな」
「ほんと?」
「あぁ。だから今日はいっぱい我慢するんだぞ?」
「あい」
ミヨコにの横を通り過ぎるまでに聞こえた会話。嫌な予感しかしないその会話。
口が利ければ何か言葉を掛けてあげられたかもしれない。
何も出来ないでニーナが専門部屋に入って行くのを黙って見送った。
今の自分にはそれしか出来なかった。