Deep Night《R18版》
第4章 No.345
甘く痺れを含んだ気だるさに溜め息を溢すミヨコはその後の仕事に付くことはなく眠りについた。
ニーナのようにはなるまいと他の女達も仕事に取り組み立場を弁える中でミヨコだけは小馬鹿にしたようにニーナを見ていた。
さっさと死ねばこの悪夢から解放されるのに記憶をなくしても生にすがり付くニーナは幸せなのか。
誰しもがニーナを哀れむ中で気に掛けてくれるだけでも此処では幸せなことではないかと思う。その小さな幸せは誰かが自分を思ってくれるからこそだと部屋の隅で丸くなるミヨコはニーナを囲む女達を睨んだ。
あれは本当に幸せなことか。
いや、ただの同情ではないか。
他人を哀れむことで自分ではなくこうなったのがニーナで良かったと安堵しているのだ。
「偽善者」
ポツリと呟くその言葉がニーナの犠牲を示す。
ニーナが酷い目に合う度に自分じゃなくて良かった、と安心したのはミヨコも同じだった。
偽善は人らしくいられると。
人間扱いされない此処で唯一自分なりに人間だと自覚出来たのはニーナが居たからだ。
墜ちていくニーナを哀れみ踏み越えていけば自分も幸せになれるとミヨコは小さく笑った。