Deep Night《R18版》
第6章 No.623
それは従業員に探りを入れられてすぐのことだった。
営業が終わって1日の食事にあり付ける時間にミヨコが戻ってきた。
「ちょ、それどうしたの!?」
フラフラになりながら口元を押さえるミヨコの手は血だらけで驚くムツミ。
「客に殴られたの!?」
涙を零して首を横に振る。
声すら漏らさずに泣くミヨコに駆け寄り背中を擦りながら経緯を尋ねたが声を出さずただただ涙を流す。
「何…されたの?」
「っっ」
「え?ーーなに……それ」
倒れこむように床に手を付いて座るミヨコの口はホッチキスのようなもので塞がれていた。
口が開かないようにするためだといわんばかりに唇を塞がれていて周りに居た女達も「ひっ」と声を漏らしミヨコから距離を取る。
「酷いことしやがる」
ダラダラと血を流し隙間から唾液と血液が漏れ出すのを何も出来ずに見ていた。
取ってあげたいと思ってもそんな度胸はない。
医療に携わる人間でない素人がやみくもに触れていいものではないと判断した。
「ごめんミヨコ」
自分よりも年下の子が酷い目に合ってるっていうのに助けてあげられない歯痒さに唇を噛み締める。
ムツミ達はここに居る限りは無力だと思い知らされた。