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じゃん・けん・ぽん!!

第12章 探し物はどこですか?­

 学は、横に並んだ小柄な後輩の顔を見下ろす。
 晃仁もまた、自分とはまるで体躯の異なる学の顔を見あげていた。上目遣いながらも、その丸い目には、どこか挑戦的な光が宿っている。
 なんだよ――と学が三度目に問おうした矢先、晃仁が先に口をひらいた。
「先輩。会長のノートなんですけど――」
 晃仁の、丸くて無垢な目に、一瞬悪魔のような光が宿った。その光に、学はぞくりとしたものを感じる。
「ノートが、どうした」
「もしかして――」
 なくしたんじゃないですか――と晃仁は言った。
 今度こそ、学は背筋が冷たくなった。
 まさしくその通りだったからだ。
「な――」
 なんで分かったんだ――と訊こうとして、学はその言葉を飲み込んだ。
 晃仁が、池田裕子と親しくしていたからだ。
 学が下駄箱交換派であるのに対して、祐子は空調設置派の筆頭だ。そして晃仁はというと、その祐子に何やら協力しているらしい。下駄箱交換の案に対抗するために、空調設置案を発議し、その派閥を集結させたのは晃仁の策だったのだという。
 そんな相手に、自分の弱みを知られたくない。だから学は言葉を飲んだのだった。とはいえ――。

 なくしたんじゃないんですか――。

 そう晃仁は言った。つまり、紛失したことをすでに知っているのだろう。なぜ知っているのかは知らないが、
 ――気味の悪い奴だ。
 と学は思った。
 どう返事をしていいのか困って視線を泳がせていると、
「良ければ協力しますよ」
 と晃仁は言った。
「はあ?­」
 学は思わず声をひっくり返して晃仁の顔を見おろした。
 小柄な後輩は、そのあどけない顔で学を見あげていた。
 悪意は感じられない。もちろん印象に過ぎないが――。
「ノート探すの、手伝ってあげましょうか」
 と晃仁はもう一度言った。
「待て待て」
 学は顎に指を当てて考える。

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