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じゃん・けん・ぽん!!

第12章 探し物はどこですか?­

 弱みを見せたくないと思っていたが、この狡猾な後輩は、学がノートを紛失したことを知っているらしい。もしくは、そうと前提して協力を申し出ることで、学を揺さぶっているのかもしれない。もし、ここで協力を求めたなら、その時点でノートを紛失したことを認めてしまう。そこで初めて弱みが弱みとして確定してしまう。だから、安易に返事ができなかった。まずは、ノートを紛失したことを、本当に晃仁が知っているかどうかを確認する必要がある。
 そのためにはどうすればいいのか――学は考えた末に、正面から尋ねた。
「ノートをなくしたと、なぜ言えるんだ。それに、そうだとして、なんで協力しようと思うんだ」
 学は考えることが若干苦手だ。こういう正面突破な形が、学の気性には合っている。
「なぜか、ですか」
 晃仁は、少し俯いて考えたふうを見せてから、上目遣いに学を見上げてぽつりぽつりと語った。
「まず、先輩の言葉が引っかかったんです。会長からノートの返却を求められた時、先輩はこう答えました」

 明日まで待って欲しい。すぐに――。

 晃仁は学が言った言葉を繰り返した。
「うん」
 学は頷いた。確かに学はそう言った。それは学も覚えている。しかし――。
「それがどうした」
 話が見えない。学が問うと、晃仁はさらに続けた。
「問題は、最後の〝すぐに〟という言葉です」
 そこまで聞いて、さすがに学も理解した。
「つまり、〝すぐに〟の後に〝探す〟って俺が言おうとしていたんじゃないかと、そう想像したわけか」
「そうです」
 晃仁は顔を輝かせながらそう言った。まるで、甲虫を捕まえた小学生のような表情だ。あどけない上に無邪気だ。やはり、悪意があるようには見えない。とすると、問題はもうひとつの疑問だ。
「だとして、なんで協力してくれるんだ」
「なんでって――」
 困っているみたいでしたから――と晃仁はなぜか悲しそうな顔をした。眉尻が八の字に垂れる。
「もちろん先輩がノートを失くしたのかどうか、本当のところは分かりません。それに、仮に失くしていたとしても、一方的に協力を申し出たのはお節介だったかもしれません。もし不快にさせてしまっていたら、すみません」

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