じゃん・けん・ぽん!!
第12章 探し物はどこですか?
大男がひとりでケーキ屋へ入る様子は、あまり似合わない――それは学が個人的に感じていたことに過ぎない。それは分かっていたことだが、感情としてはその考えに追いつかない部分があった。しかし、率先してケーキ屋へ行とうとしている晃仁の姿を見ていると、感情の面でも、もう少し自由にしても良いのかもしれない――そんなふうに学は思った。
※
くまごろーの家。
それが店の名前だった。
その店内の一角で、学と晃仁は机を挟んでいた。二人の前にはケーキと飲み物が出ている。晃仁は満面の笑みを湛えながら、ケーキを頬張っている。学はひと口も手をつけずに、晃仁がその甘みを堪能している様子を眺めていた。
「先輩、食べないんですか」
「いや、喰うけど」
周りに目をやると、ほとんどの客が、母娘連れか男女の組だ。男同志できているのは学と晃仁以外にはいない。なんだか、理不尽な居心地の悪さを学は感じていた。
「あくまでノートを取りに来たわけだから、それが気になるんだよ」
本音の代わりにそう言った。
店は木造だ。板張りの床に、丸太を積み上げてできた壁に、梁がむき出しの天井。まるで山小屋のような造りだった。入口のすぐそばに精算台があって、飲食用の机と椅子が、少ないながらも出されている。
建物はとても快適だ。ケーキだって美味い。しかしほかの客を見ると居心地は良いとは言えないし、ケーキの味を堪能することも満足にはできない気分だ。前回ここへ来た時はまったく違ったのだが――。
ここへ入って、すぐにノートの忘れ物を取りに来たことを店員に告げると、すぐに確認してきますと言って、その店員は引っ込んでしまった。すぐに、と言った割になかなか出てこないので、二人は時間が持たなくなってケーキを注文したのだった。
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くまごろーの家。
それが店の名前だった。
その店内の一角で、学と晃仁は机を挟んでいた。二人の前にはケーキと飲み物が出ている。晃仁は満面の笑みを湛えながら、ケーキを頬張っている。学はひと口も手をつけずに、晃仁がその甘みを堪能している様子を眺めていた。
「先輩、食べないんですか」
「いや、喰うけど」
周りに目をやると、ほとんどの客が、母娘連れか男女の組だ。男同志できているのは学と晃仁以外にはいない。なんだか、理不尽な居心地の悪さを学は感じていた。
「あくまでノートを取りに来たわけだから、それが気になるんだよ」
本音の代わりにそう言った。
店は木造だ。板張りの床に、丸太を積み上げてできた壁に、梁がむき出しの天井。まるで山小屋のような造りだった。入口のすぐそばに精算台があって、飲食用の机と椅子が、少ないながらも出されている。
建物はとても快適だ。ケーキだって美味い。しかしほかの客を見ると居心地は良いとは言えないし、ケーキの味を堪能することも満足にはできない気分だ。前回ここへ来た時はまったく違ったのだが――。
ここへ入って、すぐにノートの忘れ物を取りに来たことを店員に告げると、すぐに確認してきますと言って、その店員は引っ込んでしまった。すぐに、と言った割になかなか出てこないので、二人は時間が持たなくなってケーキを注文したのだった。