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幕末へ飛べ!歴史を修正せよ

第5章 人違いどうする?錯綜

もちろん、水野とその部下牧野との密談は、タイムトンネル仲間たちにより完璧に把握され、逐一小次郎ぎみと自分佐助の耳元に報告が来るのであった。

水野と牧野の密談は正確に再現すると
例えば
「あれや、いかに?」
「いや、さては」
と、まさに江戸時代の侍言葉というか殿中言葉そのもので、彼らの言葉を聴取する役割は、江戸時代の言葉に精通したメンツを当ててあった。
現代日本語に解釈し直すと、ざっと次のような会話をヒソヒソしていた。

「牧野、あの者たちをどう思う?」
「さて…どうでしょうか…」

少しの沈黙を経て牧野が言上した。
「先に届けられた御墨付き、葵紋から察するに、恐らく本物だと思われます」
「うん、うん」
水野は、軽くうなずく。
しかし、その顔には疑いの念が消えない。

「本家、あるいは徳川に害をなす者ではないのだな?」
「…と、思われます」
「うん…」
水野は、しかしさらに用心深く、座敷を見やる。
「いずれにしても、見極めが肝心ということか…」

ここまでの会話内容を聞き自分佐助も小次郎ぎみも、水野たちが半分信じ半分疑っているということを認識した上で事を進める必要あり、と互いに思った。
もし、事が急を要さないなら、避けねばならない展開といえる。しかし、現代での歴史変動は既に着々と進んで待ったなしだ。

水野たちが疑いつつもこちら側と歩調を合わせようとしているのは、幕末でも政治情勢が急を要する待ったなし状態になっているということを示している、ということだ。
渡りに舟、うまいタイミングといえる。
利害も一致した。

よし、進めよう。
皆に連絡しようとしたとき、水野が話題を変えたという報告が、入った。それは、歴史修正計画を左右する重大な話題だった。

「ところで、牧野。あの正面に座っておられる御仁(ごじん)をどう思う?」
「…気付かれましたか…」
「うん…あの御仁の顔だち、ふんいき、どうも違うような気がする」
牧野は、黙って下を見ている。

「わしは前に、卿(けい)さまに会ったことがある。あのときはまだ4、5歳であったろうか…。あのときの卿さまとはどこか違うような」

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