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幕末へ飛べ!歴史を修正せよ

第2章 歴史修正軍団「牙」結成

「自己紹介します。私は、木馬介(きばかい)と申します」
あえて、年齢は言わなかった。この壮大な、喫緊(きっきん)のミッションの前には、名前さえ要らないのではと思われた。
なお読者諸兄には、年齢を明かそう。25歳である。

「私は、川先津(かわさきしん)です」
一番先に声をかけてきた男子が、名乗った。年代は、自分と同じくらいと思われる。

そして皆、次々に名前を口にした。

「木馬さん、あなたが箱を拾い上げたのを見ました。よくぞ勇気を出してくださいました」
皆が、口々に感謝を言ってくる。
なるほど自分が勇気を出した結果、現代生活が家族が、守られたわけだが。
私はうなずいたが、謙遜は口にしなかった。美辞麗句はもはやどうでもよいということを皆、分かっていたから、咎める者もいなかった。

「ミッションのために」
と、私はいきなり切り出した。実は、戦略は既に大まか練ってあった。

「大村小次郎という架空の人物を作り出し、彦根藩主の井伊(いい)掃部頭(かもんのかみ)直弼(なおすけ)を大老に押し上げ、安政の大獄を起こし、反幕機運を結集させ、井伊を桜田門外で暗殺させる」
これが、歴史の本から消えた安政年間の政治的な出来事である。

一同、さすがに血の気が引いた。
「やはり、吉田松陰ら有為の士を…、殺すのですか?」
しなければ、明治維新は起こらない。やるしか、なかった。

そして一同の最大の心配は、井伊を幕府の頂点に押し上げるような離れ業が本当にできるのか、ということだ。
「私が持てる政治才能をフルに働かせる」
と自分は、一同に確約した。
ここ数年、自分は徹底的に政治を学び鍛え上げてきていた。将来日本国を指導したいという野心を内に秘めて。

「それで川先さん。あなたにぜひ大村小次郎を演じてもらいたい」
川先氏は、俳優養成所に通う役者志望の青年だった。
「やりましょう」
川先氏は、即答した。

あと、全員、護身術の鍛練を始めることも決まった。
時代は、刀の時代だ。現代のような安穏とした時代ではない。
男子は柳生流剣術を、女子は柔術を、各自達人の域に達するくらいに徹底的に習うことにした。

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