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幕末へ飛べ!歴史を修正せよ

第2章 歴史修正軍団「牙」結成

この第1回会合で新たに分かったことが、ある。タイムトンネルの特長だ。
開く時刻を動かすことはできない。
しかし、開く場所は、任意に選ぶことができるという。任意にといっても条件があり、歴史修正に本当に必要という感情があれば思う場所に開き、単に興味本位だとそこへは行けないという。
誰かが江戸に行きたいと願って開こうとしたが、開かなかった。

試しに
「あの山中のサムライ大村小次郎の素性を知りたい。父親の大村斉慶はどういう人物か知りたい」
と考え、タイムトンネルに頭を突っ込んでみた。

山中じゃなかった。
江戸だ!
そして…たぶん城内、門が見えた。田安門という字が見えた。
門のそばに、立派な屋敷。その屋内へ、目が進んでいく。

部屋にサムライが2人。年老いた1人が
「卿(けい)さまは無事に紀州に着かれたであろうか…」
と、もう一人に話しかけていた。
「水戸の手の者が先回りしていないことを祈るのみですな」
あのサムライは、卿さまと呼ばれていた。記録が残っていなので、つまり御三卿田安家の事実上の当主なのだ。

大村斉慶のことを知りたいな…と考えていたら、年老いたサムライが
「ご先代と水戸はまさに確執の極みじゃったのう」
と話を続けた。
「ご先代は何ゆえに譜代幕政を支持されたのか」
と問われ、年老いたサムライは
「水戸のやり口がどうも気に入らぬという感覚を持っておられたようじゃ」

水戸徳川家が副将軍と持ち上げられた背景に、代々の徳川宗家が水戸を将軍にさせまいとした政治工作があるという知識が、頭によぎった。

「水戸の野心は徳川を滅ぼす」
大村斉慶は直感的に危機を覚え、水戸を排除しようと動いた。
一時は成功し、斉慶は事実上の大老として幕府を指導した。
しかしやがて水戸斉昭と阿部正弘が結託し、敗北し不敬の罪を着せられ切腹させられた。
小次郎は若いながら父親譲りの政治的な直感で窮地を脱し、紀州へと旅立っていった…

これだけの新情報が、たった一度のタイムトンネル開通で手に入ってしまった。一同、驚いた。
「タイムトンネル万能だなあ。何でもできそう」
しかし、肝心なところは、やはり生身の人間がしないといけなかった。

第1回目のミッション先が、決まった。
紀州和歌山!決行は、半年後10月下旬に決めた。
歴史変換が、かなり進んでいるだろう。半年は、ぎりぎりの介入タイミングだった

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