テキストサイズ

幕末へ飛べ!歴史を修正せよ

第3章 取り急ぎ準備

それは、紀州徳川家の、江戸幕府における特殊な役割についての秘密だった。
「紀州徳川家には、連枝(れんし=一族)として大村氏という家がある。
徳川秀忠の長男である長丸は、子供のときに亡くなったというのが公的な記録。
実は生きていて、紀州に送られ大村氏を称して和歌山城内お控え屋敷に住みお控え様と呼称。
秀忠からの口伝で、大村氏は、徳川宗家に事あれば紀州当主を擁して江戸に出府し徳川を支えるべしとある。
大村氏は断絶したが、その最後の生き残りが例の大村小次郎の生母(大村斉慶自害の際、死亡。死因は不明)」
重大情報といえた。
一同、かなりのプレッシャーだっただけに、勇気づけられる情報だった。

さらに、紀州徳川家の安政初年の政治情勢も精査した。
予想したとおり、従来の譜代主導幕政を支持する保守派と、水戸斉昭と阿部正弘の雄藩連合(水戸主導幕政であろうが)を支持する改革派が、せめぎあい、昨今は改革派が優勢になりつつあった。

保守派の代表者は、城代家老・水野。通称は、左京大夫(さきょうだゆう)。
保守派の有力メンバーは、勘定方・酒井。通称は、雅楽(うた)。

改革派の代表者は、紀州徳川家の公式の連枝で酒井とおなじ勘定方の土井、通称は、玄蕃(げんば)であった。
もちろん土井の後ろ楯は、水戸斉昭だろう。

自分たちの活動で大村小次郎の健在が知れるだろう。横やりが入る前に、大方の手を打っておかねばならない。

夏が過ぎ、秋が深まってきた。
現代が蝕まれているのか、あちこちから物騒なニュースが飛び込んできていた。
各企業での急な女子雇い止め、首相の公然な夫唱婦随発言は、明らかに江戸時代の封建儒学思想の現れだった。
憲法から基本的人権の規定を削除しようと主張する政党が、直近の総選挙で第3党になった。
歴史修正は、急務だった。

歴史軍団介入の態勢が整った。
決行の前に、50人全員でタイムトンネルの向こうへ試し降りをした。試しが、タイムトンネルの天命に許されるのかとも思ったが、すんなりと降りられた。
タイムトンネルが、各自の頭の直上にあり、手を伸ばせば簡単に届くことが分かった。
タイムトンネルに梯子(はしご)を掛けてみると、その梯子もタイムトンネルと同じくその時代の人からは見えないことも分かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ