悪魔の誘惑
第1章 水野香奈の秘密
水野香奈は神崎健人と現在まで付き合いを続け、健人も水野と同じく私立校の教師となった。
社会人となれば、学生のころとは違って二人で会える機会が減るが、水野が会いたいと言えば、健人は必ず時間を作って会いに来てくれた。
だから水野も健人が会いたいと言えば、無理矢理でも時間を作ろうとしたが、いつも忙しいなら無理するなと水野の身体を案じてくれる事が多く、その度に彼が好きになっていった。
また学校は別であるが、同じ県内にある私立校に勤務しており、逐一仕事での悩みや相談があれば、ラインでも電話でもいいから、連絡して来いよといつも彼なりに気遣っていた。
食事の好みも似ていて、一緒に食事に行くのも好きだった。
彼といるのが心地良かった。
本当に彼とは性行為以外で特に不満を抱いたことは無かった。
性行為は、ただ恋愛に付随しているだけであって、イコールではないのだと感じさせてくれた。
肉体的な繋がりよりも精神的な結びつきを健人と一緒にいるといつも強く感じるのだ。
それは水野の恋愛において最も重要な事だった。
だから水野は彼との性行為の不満が非常にちっぽけなものだと思ったし、己の我儘だと思った。
今後も彼には黙って隠し続けていこうと思った。
それはこの先もずっと変わらない事だと思っていた。