テキストサイズ

悪魔の誘惑

第3章 始まりは静寂


始業式から一月経った5月。

クラスメイトは各々入るクラブ活動や委員会が決まり、クラスメイト同士が打ち解け、さっそくグループ化してきているようだった。

水野もやっとクラスメイト一人一人の顔と名前を把握できるようになり、今は職員室の自分のデスクで漢字テストの採点を行なっている最中だった。

また100点....。

採点しながら思わず笑みが溢れる。満点を取った生徒の名前は、転校生の上条 潤だ。


部活は美術部、委員会は水野が顧問の図書委員会に所属し、今はすっかりクラスの一員として溶け込んでいた。

容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。

そして誰に対しても人当たりが良く、何でも器用にこなしてしまう。

そんな彼の周りはいつも賑やかで、特に女子生徒の姿が多かった。

また、この一月の間に上条関係の相談を3、4回毎回違う女子生徒から持ちかけられて、正直恋愛経験が少ない水野は困り果ててしまった。

前の学校でも相当モテモテだったんだろうなぁ。


そう思いながら上条潤の赤丸しかない漢字テストの用紙をボンヤリと見ていると、ふいに水野はテスト用紙の左端に視線を移した。

”水野先生の授業、とても分かりやすくて好きです“

正書体のような綺麗な字で一行書かれていた。
水野は、ふふっと一人微笑むと、赤ペンで一言「ありがとう。」と隣に記入して、次の生徒の回答用紙の採点に移った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ