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悪魔の誘惑

第4章 視線


”古文の授業って苦手でしたけど、水野先生のお陰で最近克服する事が出来るようになりました。ありがとうございます。“

*教師としてこの上なく嬉しい言葉をありがとう。でも、上条君の苦手科目だったとは意外な発見です。*

“しっかり予習して授業に臨んでいるので(笑)”

*努力家なんですね。先生も、もっと分かりやすい授業内容にしていけるよう頑張ります*

“十分分かりやすいですよ(笑)先生こそ努力家で素敵な方ですね。”

*ありがとう。そう言って頂けて嬉しいです(笑)*

“授業の説明は丁寧で分かりやすいし、いつもクラスメイトの事を心配してくる美人で優しい水野先生が担任の先生で良かったです。”

*ありがとう。でもお世辞を言っても何も出ませんからね(笑)*

”本当の事ですよ(笑)謙遜される所も素敵ですね。失礼ながら、水野先生にはお付き合いされてる方はいらっしゃるんでしょうか?気になります。“





水野は、少し後悔していた。

ただ、水野は自分の授業をしっかりと聞き意見を言ってくれた上条に対して、お礼を言っただけだった。

それが、上条という生徒との文通に発展してしまう事など考えもしなかった。

万が一、これをきっかけに上条に恋慕の情を抱かせてしまった場合、傷つくのは自分ではなく上条だ。

そんな思いはさせたくない。


*ごめんなさい、プライベートな事はお答え出来ません。コメントもこれっきりにさせて頂きます。*


自分の行動が軽率だったと反省しながらも突き放すような言葉を使わなければならないのは心苦しかった。

もっと早く気づいてあげられなくてごめんなさい。

申し訳ない気持ちで一杯になりながらも、その動揺を微塵も見せない、筆圧の濃いしっかりとした字でコメントを残した。


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