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U15っぽいけど実際はR18

第2章 太陽


「そんなに遊びたいなら機械と遊べばよかったじゃん。てか始めに言ったよね。お前に付き合うほど世界は暇じゃないって」

「そこまで壮大な話になっていたとは驚きだよ。一体どこでそんな酷い言葉を覚えたのさ」

「ドラマでカッコいい俳優が言ってたんだよ。ほら、最近有名な爽やか系の人だよ」

「もしかしてそれ、ココロガワさんのこと」

「そうそう」

「ココロガワさんは爽やかではないだろ。どちらかと言うと濁った汚い大人だよ。どのへんが爽やかなんだい」



親友はそこでいじけるように地面を眺め、そして空を仰いだ。泣くわけではないが、初めて否定されたような切ない面持ちだった。



「僕が間違ってるのか。ココロガワさんは、もう全体的に爽やかなんだよ。どこがとか理由はないよ」

「あの人アイドルと不倫ばっかしてるし、握手しに来たファンに殴りかかったことがあるんだよ。マネージャーも嫌気が差してコロコロ変わるし、出演拒否のテレビ局も結構多いし」

「でもココロガワさん、一周目だよ」



自動販売機にコインをチャリンとして、缶がガコンって落ちてきた。紫色のサイダーは冷たく、手が水滴で潤う。



「大体の人間は一周目じゃないの」

「でも、君は二周目じゃないか」

「違うよ」

「嘘をつくな」

「生まれてこのかた嘘なんてついたことはない。正直に正確に真面目に生きてきたよ。僕は」



「じゃあどうして」とまだ何か言いたそうな親友に、冷たいソーダを投げた。ソーダは宙で放物線を描き、親友の手に落下する前に砂になって消えた。受け取ろうと前のめりになった親友は砂場に無様に転んだ。「ソーダが消えた」などと当り前の叫んでいる。



「僕は二周目じゃないよ。もう数えてないけど、少なくとも2桁より少ない数字でないことは、確かだ」

「君は人間なの」

「見た目はそう」

「なんの為に人生を何度も繰り返すのさ。一回で満足しなよ」

「君も死ねばわかるよ。それは、死ぬまで分かることはない」

「僕はまだ死にたくないよ。ココロガワさんのドラマの最終回がまだなんだから」



砂を握る。指の間で擦り地面に落とす。降り積もった砂の中から現れた冷たいソーダを見て、親友は「ソーダだ。ソーダが現れた」と叫んでいた。

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