U15っぽいけど実際はR18
第2章 太陽
お湯を注いだカップ麺は、楽しそうに熱を発している。待つ時間も旨さに加算、コスパが良い。
休憩室の一角で耳を澄ましたところでアイデアは湧いてこないが、自然に指が動くしのぎにはなりそうだ。
「すみません、ここ空いてますか」
声をかけてきたのは新入社員の溝神さんだ。礼儀正しく、しかし人に一定の壁を作る彼女が、何故か私の隣の席を選んだようだ。悪い気はしない、嫌な予感はする。
「カップ麺だと栄養偏りますよ」
「生憎これが大好物なんだ」
「先輩って嘘しかつかないですね」
「そのとおり、俺は世界一正直者さ」
セリフがどこかクサい。かっこつけているのが、自分でもわかる。お相手様が溝神様だぞ。カッコつけないやつがいますか、そんなやつは男じゃないね。
麺をそそる。温かい。壊れかけのkaradaによく響く。いいものだ。
「そんなに美味しいですか、その加工食品」
「溝神さん、彼氏できないよ」
「セクハラですか、やめてください。ていうか聞いてくださいよ。あそこの自販機のヨーグルト、まだ売り切れてないのに売り切れ表示になってるんですよ。ありえなくないですか」
「ありえんな」
「何笑ってるんですか」
「いや、笑ってないよ」
「笑ってますよ。ほんと
気持ち悪いですね。先輩って」
悪態をつきながらも、溝神さんは席も立たず、スマホいじらず、仕方なく買ったであろうサンドイッチを口に押し込んでいた。
梅雨の話である。